デジタル時代の今、ITリテラシーは誰もが身につけるべき重要なスキルです。しかし、その定義や重要性を十分に理解している人は少ないのではないでしょうか。
ITリテラシーの定義と重要性から、低いと生じる問題、ITリテラシーを高める方法までを分かりやすく解説します。
経験豊富なメディアラボのIT専門家が、一つひとつのご相談に丁寧に対応させていただきます。
ITリテラシーとは
「ITリテラシー」とは、一般的にIT技術や機器の知識を備え、それらを効果的に使いこなす力を指します。しかし、統一された明確な定義は存在しません。
例えば、情報処理推進機構(IPA)が2018年に公開した「ITリテラシースタンダード(ITLS)」では、ITリテラシーを以下のように定義しています。
「社会におけるIT分野での事象や情報等を正しく理解し、関係者とコミュニケートして、業務等を効率的・効果的に利用・推進できるための知識、技能、活用力」
ITリテラシーの能力は、大きく以下の3つに分類されます。
- 情報基礎リテラシー: 情報を収集し、評価し、活用する基本的な能力
- コンピューターリテラシー: パソコンやソフトウェアを操作し、活用する能力
- ネットワークリテラシー: インターネットを安全に利用し、データを保護する能力
これらの能力を総合的に高めることで、個人や組織のITリテラシーが向上し、デジタル社会での活動をより円滑に進めることが可能です。
ITリテラシーが重要な理由
現代のビジネス環境において、ITの活用は不可欠です。業界や業種を問わずデジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せ、ITリテラシーは単なる個人のスキルにとどまらず、企業の競争力を左右する重要な要素となっています。
一方で、情報漏えいやSNSでの炎上など、ITリテラシーの欠如は企業にとって深刻なリスクにもなり得ます。ITリテラシーの向上は、こうしたリスクを最小限に抑え、ビジネスの持続的な成長を支えるための重要なカギといえるでしょう。
ITリテラシーが低い人や企業の特徴
ITリテラシーを向上させるためには、ITリテラシーが低い人や企業の特徴を知っておくことが重要です。
特徴を知ることで、自分や自分が所属する企業のITリテラシーの現状を把握できるため、もし当てはまることがある場合は、適切に対応していくことでITリテラシーの向上を図れます。
ITリテラシーが低い人や企業の特徴を見てみましょう。
ITリテラシーが低い人の特徴
ITリテラシーが低い人には、いくつかの共通した特徴が見られます。
まず、新しいデバイスやソフトウェアの導入に対して、強い抵抗感や苦手意識を持っている、あるいは無頓着である点です。新しい技術を習得しようとせず、従来の方法に固執しがちなため、周囲とのITスキルの格差が広がり、1人取り残されてしまう可能性があります。
また、セキュリティ意識が低いことも、ITリテラシーが低い人の特徴の1つです。パスワードの使い回しや、不審なメールに添付されたファイルを安易に開くなど、無自覚にリスクの高い行動を取ることが少なくありません。
さらに、インターネット上の情報収集能力や、情報の信憑性を評価する能力も低い傾向にあります。フェイクニュースやデマに騙されやすく、誤情報に惑わされやすい点も特徴です。
ITリテラシーが低い企業の特徴
人と同じく、組織としてのITリテラシーが低い企業にも、共通した特徴があります。
まず、経営層がITの重要性を十分に理解しておらず、IT投資を軽視している点です。その結果、企業全体のITインフラ整備が遅れ、手作業や古いシステムが残ったままの企業は少なくありません。
また、セキュリティ対策や従業員へのIT教育が不十分で、組織全体の意識が低いことも特徴の1つです。組織全体の意識が低いと、ITリテラシーを高める方向に舵を切ることは困難になります。
さらに深刻なのは、ITを積極的に活用する競合他社との差が急速に開いていることに気づけない点です。デジタル化による業界の変革を把握できず、ビジネスチャンスを逃したり、市場での競争力を失ったりするリスクが高まるでしょう。
ITリテラシーが低い企業で生じる問題
企業のITリテラシーが低いことは、単にITを使いこなせないだけにとどまらず、企業の成長を阻害する深刻な問題を招きます。
ITリテラシーが低い企業で生じる、代表的な4つの問題を解説します。
セキュリティリスクの増大
ITリテラシーが低い企業では、セキュリティリスクが著しく増大します。
セキュリティに対する知識や意識の低い従業員が、重要な情報の外部流出や、マルウェア感染を招く可能性が高まるためです。例えば、フィッシングメールのファイルを安易にクリックしてマルウェアに感染したり、パスワードを使い回して不正アクセスを許したりすることが挙げられます。
これらの行動が原因で、最悪の場合、取引先や顧客にまで影響が及ぶ恐れもあるでしょう。そうなれば、企業の信用は大きく失墜し、取引停止や訴訟リスクなど経営を脅かす事態にまで発展しかねない大きな問題です。
業務効率の低下
ITリテラシーが低い企業は、ITを活用している企業に比べて、業務効率が低くなりやすい点も問題です。
業務効率の問題は、ITツールが導入されていない、または導入されていても従業員が使いこなせていない状況から生まれます。例えば、データ入力を手作業で行っていたり、操作方法の理解不足からミスが頻発したりすることなどが挙げられるでしょう。
自社では従来と同じように業務を続けているつもりでも、ITを積極的に活用する競合他社と比べて生産性に大きな差が生じ、競争力が低下していくリスクが高まります。
円滑なコミュニケーションの阻害
ITリテラシーが低い企業では、社内外のコミュニケーションが円滑に進みにくいことも問題の1つです。
現代では、コミュニケーションツールを効果的に使いこなせないと、情報共有の遅れや伝達ミスが頻発しやすくなります。例えば、Web会議システムやチャットツールを積極的に活用している企業に比べ、コミュニケーションに時間と労力がかかるでしょう。
このような状況では、生産性の向上や働き方改革も進まず、結果として従業員の満足度が低下して離職率の上昇につながるリスクもあります。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れ
ITリテラシーが低い企業では、DX(デジタルトランスフォーメーション)が遅れる可能性も高くなります。
経営層のIT投資に対する理解不足や、現場従業員の新技術に対する抵抗が、DXの推進を妨げる大きな要因です。例えば、競合他社がオンラインサービスを積極的に導入し市場シェアを拡大している中で、従来の対面販売しかできない企業は、顧客を失うリスクが高まるでしょう。
IT技術の進歩が急速に進む現代において、デジタル活用の遅れは企業の存続自体を脅かす重大な問題となり得ます。
社内のITリテラシーを高める方法
ここまで見てきたような問題を防ぐためには、企業や従業員のITリテラシーを高める必要があります。
社内のITリテラシーを高める4つの方法を紹介します。
IT活用の環境を整える
組織的にITリテラシーを高める第1歩は、社内のIT活用環境を整えることです。
ITを日常的に活用する環境がなければ、従業員のリテラシーはなかなか向上しません。例えば、クラウドサービスの活用やモバイルデバイスの配布、社内SNSの導入などが挙げられます。
ただし、急激な変化は抵抗を招く可能性があるため、従業員の声を聞きながら段階的に導入することが重要です。また、経営層が率先してITツールを活用し、その有用性を示すことも効果的でしょう。
社内外での教育・研修
従業員のITリテラシー向上には、社内外での教育・研修が有効です。
社内で、導入したシステムの使用方法やセキュリティに関するトレーニングを充実させることで、ITを活用する力と意識を高められます。また、社外のベンダーや研修業者が提供するセミナー・eラーニングなどを受講するのも良いでしょう。
継続的に教育・研修の場を提供することで、ITリテラシーが企業文化として定着していきます。従業員がみずから進んで学び、ITスキルを向上しようとする風土の醸成が大切です。
実践的な経験の積み重ね
ITリテラシーの向上には、座学による知識習得だけでなく、実践的な経験の積み重ねも重要です。
従業員が日常的にITツールに触れる機会を増やすことで、小さな成功体験を重ね、自信とスキルを着実に向上させられます。例えば、ペーパーレス化やデータ分析ツールの活用を段階的に進めるなど、具体的な目標を設定し、その達成感を味わってもらうことが有効です。
過去の業務のやり方にとらわれず、試行錯誤する文化を醸成することで、ITに対する従業員の主体的な学習意欲が高まります。
ITに関する資格取得
基礎的なITの知識やスキルが身に付いたら、次のステップとして資格取得への挑戦も効果的です。
IT資格と聞くと、エンジニアやプログラマーなどのITのプロ向けと思われがちですが、一般従業員がITリテラシーを高めるために役立つ資格も多く存在します。企業側は、資格取得を奨励するために受験費用を会社負担にしたり、合格者に一時金を支給したりすると、従業員のモチベーションが高まるでしょう。
従業員の知識・スキルの向上は、組織全体のITリテラシーの底上げにつながります。
一般従業員のITリテラシーの向上に役立つ資格
一般従業員が身につけたITリテラシーを確認するために役立つ3つの資格を紹介します。
- ITパスポート
- MOS資格
- 情報検定(J検)
ITパスポート
ITパスポートは、情報処理推進機構(IPA)が主催する国家資格です。
ITを活用するすべての社会人が備えておくべき基礎知識を測る試験で、業界や業種を問わず、ITリテラシー向上に最適な資格といえます。
試験概要は以下のとおりです。
試験日 | 原則毎日 |
---|---|
試験方式 | CBT方式 |
出題形式 | 多肢選択式(4択)
100問 |
出題範囲 | ストラテジ系(経営全般):35問程度
マネジメント系(IT管理):20問程度 テクノロジ系(IT技術):45問程度 |
試験時間 | 120分 |
受験料 | 7,500円(税込) |
合格率は50%前後と難易度はそれほど高くありませんが、普段からITに慣れ親しんでいない人は、しっかりとした準備が必要でしょう。
MOS資格
MOS資格は、「マイクロソフト オフィス スペシャリスト」の略称で、Microsoft Office製品の知識やスキルを測る資格です。
Officeを日常的に使用している人に適しています。試験科目には、Word・Excel・PowerPoint・Access・Outlookがあり、WordとExcelには一般レベルと上級レベル(エキスパート)が設定されています。
試験概要は以下のとおりです。
試験日 | 月1〜2回の全国一斉試験 または
ほぼ毎日の随時試験 |
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試験方式 | CBT方式 |
出題形式 | 実技試験 |
出題範囲 | Office製品とレベルによる |
試験時間 | 50分 |
受験料 | 10,780円〜12,980円(税込) |
合格率は非公表ですが、一般レベルが80%、上級レベルが60%といわれており、それほど難易度は高くありません。
情報検定(J検)
情報検定(J検)は、情報を扱う人材に必要とされるICT能力を評価する、文部科学省後援の検定試験です。
試験は、「情報システム」「情報活用」「情報デザイン」の3分野に分かれています。ITを利用する立場の人やITパスポートの取得を目指す人には、情報活用試験がおすすめです。情報活用試験は難易度によって1級・2級・3級に分かれています。
情報活用試験の概要は以下のとおりです。
試験日 | 年2回の全国一斉試験 または
随時試験 |
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試験方式 | PBT方式(ペーパー方式) または
CBT方式 |
出題形式 | 多肢選択式 |
出題範囲 | 3級:情報化に主体的に対応するための基礎的な知識
2級:情報社会の仕組みを理解するための基礎的知識 1級:情報化社会で生活するための実践的能力 |
試験時間 | 3級:40分
2級・1級:60分 |
受験料 | 3,000円〜4,500円(税込) |
情報活用試験の2023年度の合格率は、1級42.4%、2級50.4%、3級74.0%でした。
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まとめ
デジタル化が進んだ現代において、ITリテラシーは企業やそこで働く従業員にとって欠かせないスキルです。
ITリテラシーが低い企業は、セキュリティリスクの増加や業務効率の低下、DXの遅れなどさまざまな問題を招く可能性があります。こうした問題を防ぐためには、社内のIT環境整備や教育・研修、資格取得の奨励などが有効です。
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